デュタステリドの内服は有用か?

推奨度:A(男性型脱毛症),D(女性型脱毛症)
推奨文:男性型脱毛症にはデュタステリド内服を行うよう強く勧める.一方,女性型脱毛症には行うべきではない.

解説:デュタステリドは,テストステロンをより強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変換する 5-α還元酵素の I 型,II 型両者に対する阻害剤である.男性型脱毛症に対するデュタステリド内服の有用性に関して,1 件のメタアナリシス,3 件のランダム化比較試験,1 件の非ランダム化比較試験が実施されている.また,女性型脱毛症に対するデュタステリドの臨床試験は実施されていない.16 件のランダム化比較試験を解析した,4,950 名の男性被験者を対象とした観察期間 6~60 カ月のシステマティック・レビューにおいて,頭髪写真評価で毛量増加を示した被験者比率を比較したところ,デュタステリド 0.5 mg/日内服群はプラセボ群に対して優れた効果を示した(オッズ比 16.38,95%信頼区間 9.32~33.29).また,症例数が最も多い本邦を含めた国際臨床試験で,デュタステリド 0.5 mg/日とフィナステリド1 mg/日を用いた,917 名の男性被験者を対象とした観察期間 6 カ月のランダム化比較試験において,全毛髪数と毛直径の増加についてはデュタステリドの方が優れた効果を示したが,直径 60 μm 以上の硬毛数では両者間に有意な差がなかった.さらに,頭頂部および前頭部の写真評価のため,著明悪化-3 から著明改善+3の 7 ポイントスコアリングが行われ,治験担当者のスコアリングでは両群間に有意な差はなかったが,3 名のエキスパートパネルによる評価ではデュタステリドの方が優れた効果を示した.しかし,その点数差は頭頂部では 0.14,前頭部では 0.24 とわずかなものであった.したがって,両者の効果差については今後さらなる検討を要する.国内で実施されたデュタステリド 0.5 mg/日を用いた,120 名の男性被験者を対象とした観察期間 52 週間の非ランダム化試験において,直径 30 μm 以上の非軟毛数,硬毛数,非軟毛直径が 52 週に各々 13.5/cm2 ,15.2/cm2 ,6.5 nm 増加した.皮膚科医のパネル 3 名による頭頂の写真評価(7 ポイントスコアリング)では,26 週に 1.34,52 週に 1.50 といずれもベースラインより有意に毛量が増加した.しかし,26 週から 52 週にかけて有意な改善があったかどうかは統計学的に明らかではない.デュタステリドの副作用に関して,前述の国際臨床試験において,有害事象頻度はリビドー減少 3.3%,インポテンツ 5.4%,射精障害 3.3%,韓国の 712 例,平均観察期間 204.7 日の市販後調査では,リビドー減少 1.3%,インポテンツ 1%,射精障害 0.1%であった.他方,前述の国内非ランダム化試験(120 例,52 週間)では,リビドー減少 8.3%,インポテンツ 11.7%,射精障害 5.0%と比較的高率であった.以上より,投与にあたっては添付文書の記載をよく読んだ上で,性機能障害を含めた副作用についても十分な説明と同意が必要である.また,デュタステリドを投与中の男性型脱毛症患者において,前立腺癌診断の目的で血清PSA 濃度を測定する場合は,2 倍した値を目安として評価すべきである.さらに,フィナステリド同様,妊婦に投与すると DHT の低下により男子胎児の生殖器官等の正常発育に影響を及ぼすおそれがあり女性への投与は禁忌である.

以上のように,男性型脱毛症に対するデュタステリド内服の発毛効果に関して,高い水準の根拠があるので,内服療法を行うよう強く勧める.他方,女性型脱毛症には内服療法を行うべきではない.ただし,本邦男性については,ランダム化比較試験のうち 1 件の国際臨床試験で 20 歳以上の男性を対象に行われたので,20 歳未満に対する安全性は確立していない.さらに,上記の臨床試験では 1 年を超える長期投与での効果や投与中止後の毛髪量変化については検討されていない.