ミノキシジル外用は有用か?

推奨度:A
推奨文:ミノキシジル外用を行うよう強く勧める
(男性型脱毛症:5%ミノキシジル,女性型脱毛症:1%ミノキシジル)

解説:ミノキシジルの有用性に関して,男性型脱毛症に対する 14 件のランダム化比較試験と 1 件のシステマティック・レビュー,女性型脱毛症に対する10 件 の ラ ン ダ ム 化 比 較 試 験
と 1 件 の シ ス テ マティック・レビューが実施されている.

まず男性型脱毛症に関しては,2%ミノキシジル液を用いた 5 件のランダム化比較試験を解析した,924名の男性被験者を対象とした観察期間 24 週のシステマティック・レビューにおいて
,2%ミノキシジル群ではプラセボ群に比べ,脱毛部の総毛髪数がベースラインより平均で 20.90 本(95%信頼区間 9.07~32.74)と有意に増加した.2%および 5%ミノキシジル液を比較したランダム化比較試験は 2 報あり,そのうち症例数が多い 393名の男性被験者を対象とした,観察期間 48 週までのランダム化比較試験において,脱毛部 1 cm2 内の非軟毛(nonvellus hair)数のベースラインからの増加は,プラセボ群が平均 3.9 本,2%ミノキシジル群が平均 12.7本,5%ミノキシジル群が平均 18.6 本で,5%ミノキシジル群で他の 2 群に比し有意に(対プラセボ p<0.001,対 2% p=0.025)増加した.また,国外ではフォーム(泡)型のミノキシジルも使用されている.フォーム(泡)型 5%ミノキシジルを用いた,症例数が最も多い 352 名の男性被験者を対象とした観察期間 16 週までのランダム化比較試験において,脱毛部 1 cm 2 内の毛髪数のベースラインからの増加は,プラセボ群が平均 4.7 本だったのに対し,フォーム(泡)型 5%ミノキシジルは平均 20.9 本と,有意(p<0.0001)に増加した.

国内では,1%,および 5%ミノキシジル液を用いた,300 名の男性被験者を対象とした観察期間 24 週までのランダム化比較試験が行われ,脱毛部 1 cm2 内の非軟毛数のベースラインからの増加は,1%ミノキシジル群が平均 21.2 本,5%ミノキシジル群が平均 26.4本と,5%ミノキシジル使用群で有意(p=0.02)に増加した.次いで女性型脱毛症に関しては,1%,2%,および5%ミノキシジルを用いた 8 件のランダム化比較試験を解析した,1,242 名の女性被験者を対象とした観察期間 24~32 週のシステマティック・レビューにおいて,ミノキシジルの有効性が明らかになった.すなわち,ミノキシジル群では,プラセボ群に比べ,脱毛部 1 cm2内の毛髪数が平均で 13.18 本(95%信頼区間 10.92~15.44)と増加した.有害事象については,4 件,計 725名のランダム化比較試験を解析した結果,1%ミノキシジル群で相対危険度 1.12(95%信頼区間 0.61~2.06),2%ミノキシジル群で相対危険度 1.24(95%信頼区間0.82~1.87),5 % ミ ノ キ シ ジ ル 群 で 相 対 危 険 度 2.05(95%信頼区間 0.96~4.37)だった.また,2%ミノキシジルと 5%ミノキシジルを用いた3 件のランダム化比較試験を解析した,631 名の女性被験 者 を 対 象 と し た 観 察 期 間 26~52 週 の シ ス テ マティック・レビューにおいて,2%ミノキシジル群では5%ミノキシジル群に比べ脱毛部 1 cm 2 内の総毛髪数が平均で 2.12 本少なかった(95%信頼区間 5.47~1.23)が,両者の間に有意差はなかった.また,有害事象についても 4 件,計 1,006 名のランダム化比較試験を解析した結果,相対危険度 1.02(95%信頼区間 0.91~1.20)で両者の間に有意差はなかった.しかし,以上の毛髪数の増加,および有害事象の解析のエビデンスの質は低く,さらなる検討が必要である.

なお,国内では 2%ミノキシジル液を用いた臨床試験はなされていないが,1%ミノキシジル液を用いた,280 名の女性被験者を対象とした観察期間 24 週までのランダム化比較試験が行われ,脱毛部 1 cm 2 内の非軟毛数のベースラインからの増加は,プラセボ群が平均2.03 本,1%ミノキシジル群が平均 8.15 本と,1%ミノキシジル群はプラセボ群に対して有意な(p<0.001)発毛促進効果を示した.ミノキシジルの有害事象として,男女を通して瘙痒,紅斑,落屑,毛包炎,接触皮膚炎,顔面の多毛などが報告されている.2%および 5%ミノキシジル液を比較した,393 名の男性被験者を対象とした,観察期間 48週までのランダム化比較試験では,瘙痒,接触皮膚炎といった皮膚症状の出現率は 5%ミノキシジル群で6%と,2%ミノキシジル群(2%),プラセボ群(3%)より高かった.また,2%ミノキシジル(1 日 2 回)および 5%ミノキシジル(1 日 2 回)を用いた,381 名の女性被験者を対象とした観察期間 48 週までのランダム化比較試験において,皮膚症状の出現率は 5%ミノキシジル群で14%と,2%ミノキシジル群(6%),プラセボ群(4%)より高かった.一方,2%ミノキシジル(1 日 2 回)および 5%ミノキシジル(1 日 1 回)を用いた,113 名の女性被験者を対象とした観察期間 24 週までのランダム化比較試験では,皮膚症状の出現率は 5%ミノキシジル群の方が 2%ミノキシジル群より有意に(p=0.046)低かった.そのため,両者の有害事象については,まだ見解が一致していない.ミノキシジル外用による有害事象例で成分パッチテストまで行った例は非常に少ない.上述の 393 名の男性被験者を対象としたランダム化比較試験において,5%ミノキシジルで接触皮膚炎症状を呈した 10 名のうち,パッチテストまで施行したのは 3 名のみであり,うち 2 名は溶媒であるプロピレングリコールにも陽性を示した.このように,ミノキシジル外用による有害事象は必ずしもミノキシジルだけの作用によるとは言えない.一方で,男女ともにミノキシジル外用初期に休止期脱毛がみられることがあり,これが外用中止につながる恐れがあるため,患者への説明が必要である.

以上のように,ミノキシジル外用の発毛効果に関して,高い水準の根拠があるので,男性型脱毛症に 5%ミノキシジル,また女性型脱毛症に 1%ミノキシジル
を外用するよう強く勧める.